春の陽気に誘われて訪れたこの日、
いぶき館のまわりには桜がほころび、鳥のさえずりと渓流の音が心地よく響いていました。都会の喧騒を忘れさせてくれるような、やさしい静けさがここにはあります。
「都会の便利さがなくても、ここには心を穏やかにする「空気」「色」「音」があるんですよ」
そう話すのは、いぶき館の館長・伊藤さん。福岡市で約20年を過ごしたのち、お父様の故郷であるこの地へ戻り、平成19年からいぶき館の運営に携わっています。ちなみに、伊藤さんのお父様は石工職人で、岩屋神社の鳥居を手がけた方。
その確かな技と村への想いは、今もこの地に静かに息づいています。
いぶき館の建物には、古き良き時代の記憶が宿っています。
最初は、伊藤傳右衛門(明治時代に活躍した実業家で筑豊の石炭王)が建てた炭鉱幹部たちの社交場「炭鉱クラブ」として使用されていた建物。その後、料理旅館「ほうしゅ山荘」という旅館として活用しましたが、廃業後に東峰村が買い取り、平成17年(2005年)に「いぶき館」として新たにスタートしました。
「観光案内所がなかった宝珠山地区で、村の『情報発信の拠点』を作りたかった」
伊藤館長のその想いが、いぶき館の空気に今も息づいています。
パンフレットを手に観光情報を集める人のそばで、ふらっと立ち寄った地元の方が世間話を楽しんでいたり──。館内には、まるで村の“縁側”のような、自然で心和む空気が流れています。
「この時期は川沿いの桜がきれいですよ」
「来月は窯元さんの展示会があるんですよ」
スタッフとのそんなやりとりを通じて、ガイドブックには載っていない“今の東峰村”にふれることができるのも、いぶき館ならではの魅力です。
館内の販売スペースには、東峰村が認定する特産品ブランド「小さな宝」シリーズの商品が揃っています。
この「小さな宝」は、東峰村の自然や伝統、丁寧な手仕事から生まれた品々の中でも、特に地域の魅力を伝えるものとして選ばれた特産品です。
農産物や加工品、工芸品など、いずれも村の風土と人の想いが込められたものばかり。旅の記念や贈り物としても、村の魅力を購入することができます。
観光前に立ち寄って地図やおすすめスポットの情報を得るもよし、帰りにもう一度訪れてお土産を選び、村の空気を胸に収めるのもよし。
いぶき館は、東峰村の旅をより深く、より価値あるものにしてくれる“村のはじまりの場所”です。