清らかな水が湧き、のどかな里山の風景が広がる焼物の里
福岡県の筑後地域に位置する東峰村は、2005年に小石原村と宝珠山村が合併して誕生した小さな村です。こんこんと湧きだす清らかな水、山々に抱かれる穏やかな集落。日本の原風景が今なお残るこの地に足を運べば、誰もが懐かしさや安らぎを感じることでしょう。また、約350年の伝統が息づく焼物も東峰村を語る上で欠かせません。技法を守りつつ時代に合った変化を遂げる焼物は、全国的にも注目を集めています。そして、訪れる人を温かく迎えてくれる人々の笑顔も東峰村の大きな魅力です。
四季折々の美しさが広がる谷あいの棚田
宝珠山の谷あいにある竹地区では、限られた土地を活用するために約400年前から棚田が作られ、現在も米作りが行われています。標高130~400mにわたり、約400枚の石積みの棚田が整然と連なる様は息をのむ美しさ。1999年には農林水産省の「日本の棚田百選」に選出されました。田植えの頃は水田に反射する夕陽、初夏は周囲を舞う蛍、夏は一面に広がる緑の稲、秋は黄金色に輝く稲穂、冬は雪に覆われた静かな棚田と一年を通して情緒あふれる風景を楽しむことができます。
民藝と茶の湯、二つの側面をもつ焼物文化
焼物の里として知られる東峰村には、「小石原焼」と「高取焼」という二つの焼物があり、44の窯元が伝統を受け継いでいます。「小石原焼」は「飛び鉋」や「刷毛目(はけめ)」と呼ばれる模様が特徴で、人々の暮らしに寄り添う日用雑器として発展。大正・昭和にかけて“民藝の父”柳宗悦らに「用の美」と賞賛されたことで広く知れ渡りました。一方の「高取焼」は「綺麗さび」と表現される茶の湯の美意識を受け継ぐ陶器。茶人・小堀遠州好みの茶陶を作った「遠州七窯」の一つに数えられます。春と秋には「民陶むら祭り」が開催され、多くの焼物ファンが足を運びます。
優しさと温かさに溢れる東峰村の人々
人口約2,000人の東峰村は、都会では薄れつつある人と人の繋がりをしっかりと感じられる土地です。自然溢れる環境や地域ぐるみで子どもを見守る取り組みなどに惹かれて移住する人も多く、若い世代からお年寄りまでさまざまな人々の笑顔にあふれています。もちろん旅行者も大歓迎。のどかな土地ならではの温かなおもてなしが東峰村で待っています。