2016-01-19

宝珠山の民話1

よそえもん

 屋椎裏には三国石という所がある。筑前・豊前・豊後の国境である。
 それより南のほうに、「スネふり岩」という岩がある。この岩は、合楽の伊藤よそえもんという人にちなんでいるという。

『元禄年間の初期、合楽与三右衛門という人がおったげな。

 ある日のことたい。筑前と豊後の国のさかいにある合楽という所で、小鹿田の人が播いとった麦を、筑前のよそえもんが来て、刈りとってしもうた。
 そこで小鹿田の人が文句を言うたところ、「ここは筑前じゃから、筑前の者が刈ってもよかろうもん」と主張して、麦をとってしもうた。
 おこった小鹿田の人は、代官に訴えた。
 そして、代官は黒田の殿様に「犯人を差し出せ。」というて、使いを出した。そこで、殿様はよそえもんを呼んで調べたばってん、よそえもんは「ぜったいあそこは筑前だ。」と主張しきった。その証拠に「国ざかいの泥ん中には木炭が埋めてある。」と言うて。

 そこで、筑前側は殿様と庄屋とよそえもん、豊後側は代官と庄屋が立ち会うて、現地調査をするこつになった。その前夜、よそえもんはこっそり木炭を埋めたところに行って、「ここを掘ってみなはい。」と言うたので、そこを掘ったら木炭がでてきた。それで、合楽はめでたく筑前の領分になったげな。
 その後、よそえもんは苗字帯刀を許され、一代無税になり、よそえもんが死んだあとも、境を見守るために、お墓は東向きにたてられたげな。』

 現在、合楽の谷を流れている川が、福岡県と大分県の県境になっています。この川が、よそえもんが木炭を埋めておいた場所を掘った名残りということです。

(森本)

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